治療用アプリの市場規模はどのくらい?将来的にどこまで成長するのか

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治療用アプリの市場規模はどのくらい?将来的にどこまで成長するのか

治療用アプリはスタートしたばかりの市場で、将来的には大幅に規模が拡大する可能性があります。また、従来の服薬や医療機器での治療をカバーでき、医療業界そのものに大きな影響を与える可能性が高い領域です。

医療業界で仕事をするうえで、治療用アプリの知見は非常に重要です。この記事では、治療用アプリの概要や市場規模などを詳しく解説。治療用アプリの知識をイチから身につけられます。

治療用アプリとはそもそも何?ヘルスケアアプリと何が違うの?

治療用アプリとはそもそも何?ヘルスケアアプリと何が違うの?
市場規模について説明する前に、治療アプリの概要と「ヘルスケアアプリ」との違いについて解説します。

(1)治療用アプリとは
治療用アプリとは、服薬や医療機器での治療ではカバーが難しい、患者の行動変容にアプローチできる治療方法です。

定期的に治療のために通院していたとしても、医療機関での診察から次の診察までの間は、空白期間になります。治療用アプリは、患者が服薬や血圧などのバイタルを入力すると、AIが医学エビデンスに基づいて解析し、病院に行かなくても治療やアドバイスを受け取れます。

特に生活習慣病などの自覚症状があまりない病気の場合、空白期間に治療へのモチベーションが下がり、治療を止めてしまう、誤った方法で服薬するといった患者は一定数いるものです。

正しい治療を続けずに放置すると、初期の段階では自覚症状がなくても、病気が進行するとさまざまな症状が現れ、最終的に命を落としてしまうケースもあります。

治療用アプリを活用することで、治療効果がアップして回復や健康維持につながります。

治療用アプリが適しているのは、糖尿病をはじめとする生活習慣病やニコチン依存症、メンタルヘルスなど、日々の行動が病状に大きな影響を与える疾患です。

(2)ヘルスケアアプリとの違いとは
治療用アプリとよく似たものに、ダイエットアプリやデジタル万歩計をはじめとするヘルスケアアプリがあります。大きな違いとして医療機器として承認を受けている点があげられます。治療用アプリは、臨床試験などを行い、医学的根拠に基づいて効果を確認しており、医師の処方があってはじめてダウンロードできます。

ヘルスケアアプリは、体重・血圧・心拍数・食事・消費カロリーなどを記録し健康管理に役立てるためのもので、病気を治療するものではありません。また、医師の処方がなくても使用できます。

日本の治療用アプリ市場規模はどのくらい?今後の予測とは

日本の治療用アプリ市場規模はどのくらい?今後の予測とは
総合ビジネスマーケティング会社である富士経済が2022年に発表したプレスリリースによると、治療用アプリのうち保険適用されたものを対象とした市場規模は、2021年時点で1億円にもなります。

2022年の見込みは約2億円と2021年と比べて2倍、2035年では約2,850億円と2021年と比べると2,850倍にもなると予測されています。

日本の治療用アプリ市場は、2020年にCureAppの『CureApp SC』が医療機器として承認されたことでスタートしました。『CureApp SC』は禁煙をサポートするアプリで、日本の治療用アプリとしては初めて保険適応になりました。

日本の治療用アプリ開発はまだスタートしたばかりですが、大手製薬会社はもちろん百以上のベンチャー企業が参入しており、研究段階のアプリは急増しています。今後、多くの治療用アプリがリリースされ、急速に市場が拡大するのではないでしょうか。

治療用アプリと同じく、医療AIや医療ビックデータを活用したシステムやサービスに分類されるゲノム医療支援システム・サービス領域は、2035年の市場規模は80億円、2021年比で7.3倍に成長すると予想されています。

また、医療ビッグデータ分析サービスの2035年の市場規模の予想は746億円、2021年比で2.4倍です。

成長著しい医療AIや医療ビッグデータを活用したシステムやサービスのなかでも、特に治療用アプリは期待が持てる領域といえるでしょう。

海外の治療用アプリ市場規模はどのくらい?今後の予測とは

海外の治療用アプリ市場規模はどのくらい?今後の予測とは
治療用アプリの開発・普及は、日本よりもアメリカの方が先行しています。2010年にリリースされた糖尿病患者向け治療補助アプリ『BlueStar』は、治療用アプリ市場にとって大きな転機となりました。

『BlueStar』は「FDA(アメリカ食品医薬局)」より、「管理医療機器」に該当するクラスⅡを取得しました。クラスⅡの取得に伴い、大手民間保険会社の保険償還となっており、患者が保険に入っていれば、一度利用料を負担後、定められた金額が戻ってきます。

『BlueStar』はアプリ単体で糖尿病の改善効果があり、治療用アプリは医薬品や医療機器による治療と並ぶ第三の治療法だと認知されるきっかけとなりました。

また、アメリカ以外の国でも治療用アプリ開発に積極的です。例えば、ドイツではすでに約40品目の医療用アプリが製品化されています。

こうした背景から、グローバル市場は年率20%以上成長し、2025年には1兆円規模になるという予測もあります。

日本の治療用アプリ市場は本当に成長する?3つのポイントを紹介

日本の治療用アプリ市場は本当に成長する?3つのポイントを紹介
アメリカなど海外の治療用アプリ市場が拡大するなか「海外製品におされて日本市場は拡大しないのでは」と懸念を持つ人もいるかもしれません。

しかし、下記のような理由から日本の治療用アプリ市場は成長すると考えられます。

(1)厚生労働省が開発促進の施策をしている
治療用アプリを開発しても、医療機器として承認され、保険適用されるかの見通しが立たないため、日本における治療用アプリへの取り組みに懸念を感じる企業は少なくありません。

厚生労働省は2021年4月に、治療用アプリの開発を後押しする「プログラム医療機器実用化促進パッケージ戦略」を本格的に開始し、参入しやすい環境を整えました。

こうした施策により、治療用アプリの開発をためらっていた企業の参入が増え、より市場が拡大しやすくなる可能性があります。

(2)国民皆保険制度が確立している
日本では全ての国民が公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」が確立しているため、医療用アプリが保険適用になれば、原則的に3割負担で利用できます。

そのため、治療用アプリに保険が適用されれば、ユーザーの数は大幅に伸びる可能性があるでしょう。

一方、治療用アプリにおいて日本より先行しているアメリカは国民皆保険制度がなく、一部の民間保険会社でしか治療用アプリは保険適用されません。潜在的なユーザー数を考えると、日本の治療用アプリ市場には大きな期待が持てます。

(3)少子高齢化
高齢者が増えると医療を必要とする人の割合が高まり、医療費を支える現役世代の負担が大きくなります。また、医療従事者の数が不足し、充分な医療を提供するのが難しくなるかもしれません。

治療用アプリは、医薬品と比較して開発費が安いため、治療にかかる費用が安い傾向にあります。また、アプリ上でデータ管理などを行うことで業務効率化が実現し、リソース不足を補えます。

そのため治療用アプリのニーズが高く、市場が成長しやすいでしょう。


【まとめ】
治療用アプリは、患者の行動変容に働きかけ、これまでの服薬や医療機器での治療では対応できなかった部分にアプローチできる治療法です。治療用アプリの市場はまだスタートしたばかりで、今後さらなる発展が期待できます。

富士経済のプレスリリースでは、日本の治療用アプリ市場規模は2021年時点で約1億円、2035年には約2,850億円と2021年と比べ2,850倍にまで成長すると予測されているほどです。

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