医療従事者の給料が上がる!ベースアップ評価料について解説
2025/08/13
2025/12/01
医療業界の人手不足解消に向けて、医療従事者の賃上げが重視されています。その一環として、2024年度の診療報酬改定では、「ベースアップ評価料」という新たな仕組みが創設されました。
この記事では、ベースアップ評価料に関心のある医療従事者の方に向けて、改定の背景や実態、そして今後の動向まで詳しく解説します。
現在の職場の待遇に不安を感じている方や、転職を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
この記事では、ベースアップ評価料に関心のある医療従事者の方に向けて、改定の背景や実態、そして今後の動向まで詳しく解説します。
現在の職場の待遇に不安を感じている方や、転職を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
医療従事者の賃上げはなぜ必要?ベースアップ評価料新設の背景
ベースアップ評価料は、医療従事者の待遇を改善することで、人材確保を促進するための施策です。2024年改定で新設された背景について解説します。
光熱費や食費などの物価高騰を背景に、さまざまな業界で全社員の給与水準を一律に引き上げるベースアップやインフレ手当などの賃上げ施策が実施されています。
経団連が発表した「2023年の春季労使交渉の最終集計結果」によると、大企業の賃上げ率は3.99%、平均賃上げ幅は1万3,362円と、約30年ぶりの高水準となりました。
しかし、医療業界の賃金改定率は他産業と比較して著しく低い水準にとどまっています。2023年に一般社団法人日本病院会などが実施した「医療機関における賃金引上げの状況に関する調査」によると、医療機関の賃上げ率は1.9%にとどまっています。ただし、調査対象は限られており、すべての医療機関に当てはまるわけではない点に注意が必要です。
このような賃金格差は、医療従事者の他業界への流出を招き、医療現場の人手不足を深刻化させる要因のひとつです。
2025年に、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、国民の約3人に1人が65歳以上の高齢者になります。
高齢化により医療ニーズは年々増加している一方で、医療を担う現役世代は減少しており、医療従事者の確保は非常に困難です。
深刻な人手不足によって、医療従事者の負担が増え、離職率が上昇するという悪循環を生み出しています。
このままでは、医療従事者の人材不足により医療体制が維持できなくなり、十分な医療サービスを受けられない状況や、地域や診療科による格差が広がるといった事態が起きるかもしれません。
(1)他産業との賃金格差拡大
光熱費や食費などの物価高騰を背景に、さまざまな業界で全社員の給与水準を一律に引き上げるベースアップやインフレ手当などの賃上げ施策が実施されています。
経団連が発表した「2023年の春季労使交渉の最終集計結果」によると、大企業の賃上げ率は3.99%、平均賃上げ幅は1万3,362円と、約30年ぶりの高水準となりました。
しかし、医療業界の賃金改定率は他産業と比較して著しく低い水準にとどまっています。2023年に一般社団法人日本病院会などが実施した「医療機関における賃金引上げの状況に関する調査」によると、医療機関の賃上げ率は1.9%にとどまっています。ただし、調査対象は限られており、すべての医療機関に当てはまるわけではない点に注意が必要です。
このような賃金格差は、医療従事者の他業界への流出を招き、医療現場の人手不足を深刻化させる要因のひとつです。
(2)高齢化社会における医療ニーズの増大
2025年に、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、国民の約3人に1人が65歳以上の高齢者になります。
高齢化により医療ニーズは年々増加している一方で、医療を担う現役世代は減少しており、医療従事者の確保は非常に困難です。
深刻な人手不足によって、医療従事者の負担が増え、離職率が上昇するという悪循環を生み出しています。
このままでは、医療従事者の人材不足により医療体制が維持できなくなり、十分な医療サービスを受けられない状況や、地域や診療科による格差が広がるといった事態が起きるかもしれません。
医療従事者は必見!ベースアップ評価料の仕組みとは
医療従事者の人材不足を解消するために、厚生労働省は、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップにより、賃上げの実現を目指す方針です。
※厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要」
その基盤となるのが、ベースアップ評価料の新設や、初再診料・入院基本料などの引き上げです。ここでは、ベースアップ評価料の内容を紹介します。
2024年度診療報酬改定で新設されたベースアップ評価料は、医療従事者の賃上げを目的に、特例的に新設された診療報酬上の算定項目です。
ベースアップ評価料を算定することで診療報酬額が増え、ベースアップの財源を確保できます。ベースアップ評価料は、すべて基本給や毎月の手当のアップに使用するルールになっているため、安定した収入増を実現できます。
ベースアップ評価料には
「外来・在宅ベースアップ評価料(I)」
「外来・在宅ベースアップ評価料(II)」
「入院ベースアップ評価料」「訪問看護ベースアップ評価料(I)」
「訪問看護ベースアップ評価料(II)」が設けられています。
これらの評価料は医療機関の規模や特性に応じて選択できる仕組みです。医療機関が届け出をすることで、診療報酬として算定できるようになります。
初再診料・入院基本料などの引き上げは、40歳以上の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師・事務職員などの賃上げを目的としています。
ベースアップ評価料による賃上げ対象者は、上記以外の職種に従事する医療スタッフです。
<対象職種>
薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、看護補助者、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、義肢装具士、歯科衛生士、歯科技工士、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、管理栄養士、栄養士、精神保健福祉士、社会福祉士、介護福祉士、救急救命士、公認心理師、診療情報管理士、医師事務作業補助者など、その他医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)が含まれています。
※厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要」
その基盤となるのが、ベースアップ評価料の新設や、初再診料・入院基本料などの引き上げです。ここでは、ベースアップ評価料の内容を紹介します。
(1)ベースアップ評価料とは
2024年度診療報酬改定で新設されたベースアップ評価料は、医療従事者の賃上げを目的に、特例的に新設された診療報酬上の算定項目です。
ベースアップ評価料を算定することで診療報酬額が増え、ベースアップの財源を確保できます。ベースアップ評価料は、すべて基本給や毎月の手当のアップに使用するルールになっているため、安定した収入増を実現できます。
(2)ベースアップ評価料の種類と算定要件
ベースアップ評価料には
「外来・在宅ベースアップ評価料(I)」
「外来・在宅ベースアップ評価料(II)」
「入院ベースアップ評価料」「訪問看護ベースアップ評価料(I)」
「訪問看護ベースアップ評価料(II)」が設けられています。
これらの評価料は医療機関の規模や特性に応じて選択できる仕組みです。医療機関が届け出をすることで、診療報酬として算定できるようになります。
(3)ベースアップ評価料による賃上げ対象者
初再診料・入院基本料などの引き上げは、40歳以上の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師・事務職員などの賃上げを目的としています。
ベースアップ評価料による賃上げ対象者は、上記以外の職種に従事する医療スタッフです。
<対象職種>
薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、看護補助者、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、義肢装具士、歯科衛生士、歯科技工士、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、管理栄養士、栄養士、精神保健福祉士、社会福祉士、介護福祉士、救急救命士、公認心理師、診療情報管理士、医師事務作業補助者など、その他医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)が含まれています。
ベースアップ評価料制度で変化は起きた?医療従事者の賃上げの実態
2024年にベースアップ評価料制度がスタートし、医療従事者の賃上げはどのようになったのでしょうか。実態について詳しく見ていきましょう。
ベースアップ評価料の算定は任意です。そのため、すべての医療機関で賃上げが実施されているわけではありません。
日本看護連盟が発表した『病院および訪問看護ステーションにおける「ベースアップ評価料」申請の実態』によると、病院の90%以上、訪問看護ステーションの70%がベースアップ評価料を申請しているという結果でした。
ある程度の数の医療機関は申請しているものの、申請していない医療機関もあります。そのため、勤務している医療機関によっては、ベースアップ評価料の算定による賃上げが行われない可能性があります。
申請しない主な理由は、事務手続きが煩雑である、患者の負担が増えるため理解を得るのが難しいなどです。
ベースアップ評価料で算定された診療報酬は、職種や勤務形態などによって異なる金額で配分できます。
そのため、同じ医療機関内でも職員によって賃上げ幅に差が出る可能性があります。
賃上げの支給方法については、ベースアップではなく、手当での支給となるケースが多く見られています。
背景には、ベースアップ評価料による診療報酬の算定が一時的な措置である点が挙げられます。現時点では、ベースアップ評価料は2024・2025年度の2年間に限定された特例措置とされており、制度の継続については今後の診療報酬改定で検討される予定です。
一度ベースアップを行ってしまうと引き下げるのは難しいため、手当の増額・新設で対応する医療機関が多いのが現状です。
基本給の増額は長期的な収入増につながりますが、手当での支給は一時的なものかもしれません。また、将来の昇給や賞与計算を考えると、基本給の増額ほどの恩恵は受けられないでしょう。
※日本看護連盟HP
(1)医療機関によって実施状況にばらつきがある
ベースアップ評価料の算定は任意です。そのため、すべての医療機関で賃上げが実施されているわけではありません。
日本看護連盟が発表した『病院および訪問看護ステーションにおける「ベースアップ評価料」申請の実態』によると、病院の90%以上、訪問看護ステーションの70%がベースアップ評価料を申請しているという結果でした。
ある程度の数の医療機関は申請しているものの、申請していない医療機関もあります。そのため、勤務している医療機関によっては、ベースアップ評価料の算定による賃上げが行われない可能性があります。
申請しない主な理由は、事務手続きが煩雑である、患者の負担が増えるため理解を得るのが難しいなどです。
(2)職種などによる格差がある
ベースアップ評価料で算定された診療報酬は、職種や勤務形態などによって異なる金額で配分できます。
そのため、同じ医療機関内でも職員によって賃上げ幅に差が出る可能性があります。
(3)手当での支給が多い
賃上げの支給方法については、ベースアップではなく、手当での支給となるケースが多く見られています。
背景には、ベースアップ評価料による診療報酬の算定が一時的な措置である点が挙げられます。現時点では、ベースアップ評価料は2024・2025年度の2年間に限定された特例措置とされており、制度の継続については今後の診療報酬改定で検討される予定です。
一度ベースアップを行ってしまうと引き下げるのは難しいため、手当の増額・新設で対応する医療機関が多いのが現状です。
基本給の増額は長期的な収入増につながりますが、手当での支給は一時的なものかもしれません。また、将来の昇給や賞与計算を考えると、基本給の増額ほどの恩恵は受けられないでしょう。
※日本看護連盟HP
医療従事者の将来設計の参考に!ベースアップ評価料の今後
ベースアップ評価料は、原則として2024年度、2025年度を対象としています。将来の社会情勢などによっては、制度が変更される可能性があります。今後について解説します。
2024年度の診療報酬改定で創設されたベースアップ評価料は、特例的な対応とされており、制度が継続されるか分からない状況です。
しかし、10年ほど前から行われている介護職員処遇改善加算などによる処遇改善は、介護報酬制度が改定しても、廃止されていません。ベースアップ評価料も、簡単には廃止されない可能性が高いと考えられます。
ベースアップ評価料が新設されてからも、他業界と比べると医療業界の賃上げの水準は低いままです。そのため、医療従事者が他業界へ流出するリスクは完全には解消できていません。
ただし、人材確保のためにさらなる賃上げ施策が実施される可能性があります。また、医療機関独自の取り組みによる、待遇改善も期待できます。
(1)制度が継続する可能性
2024年度の診療報酬改定で創設されたベースアップ評価料は、特例的な対応とされており、制度が継続されるか分からない状況です。
しかし、10年ほど前から行われている介護職員処遇改善加算などによる処遇改善は、介護報酬制度が改定しても、廃止されていません。ベースアップ評価料も、簡単には廃止されない可能性が高いと考えられます。
(2)他業界との賃上げ格差
ベースアップ評価料が新設されてからも、他業界と比べると医療業界の賃上げの水準は低いままです。そのため、医療従事者が他業界へ流出するリスクは完全には解消できていません。
ただし、人材確保のためにさらなる賃上げ施策が実施される可能性があります。また、医療機関独自の取り組みによる、待遇改善も期待できます。
まとめ
高齢化や他業界の賃金高騰により、医療従事者の人材不足が深刻化しています。人材確保のために賃上げへの取り組みが進んでおり、その中心が2024年のベースアップ評価料の新設です。
ベースアップ評価料により、看護師や薬剤師などの処遇改善が進むことが期待されています。しかし実施状況は医療機関により大きく異なり、賃上げの恩恵を受けられない職場も存在します。
ベースアップ評価料の今後については、継続される可能性が高いと考えられています。また、人手不足を背景に、他業界との賃金格差を解消する動きが強まるかもしれません。
転職を考える際は、ベースアップ評価料の導入など、医療従事者の処遇改善に力を入れている職場かどうかもチェックするようにしましょう。
ベースアップ評価料により、看護師や薬剤師などの処遇改善が進むことが期待されています。しかし実施状況は医療機関により大きく異なり、賃上げの恩恵を受けられない職場も存在します。
ベースアップ評価料の今後については、継続される可能性が高いと考えられています。また、人手不足を背景に、他業界との賃金格差を解消する動きが強まるかもしれません。
転職を考える際は、ベースアップ評価料の導入など、医療従事者の処遇改善に力を入れている職場かどうかもチェックするようにしましょう。

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