常勤医師と非常勤医師の違い|32時間ルールや働き方を徹底解説
2023/03/31
2025/11/11
医師としてのキャリアを築く上で、「常勤」か「非常勤」かの働き方の選択は重要なテーマです。それぞれの働き方には勤務時間や待遇、社会的信用、将来のキャリア設計に関して明確な違いがあります。特に「32時間ルール」と呼ばれる厚生労働省の基準は、社会保険や税制上の取り扱いにも関わる重要な指標です。
本記事では常勤医師・非常勤医師の違いを明確にし、それぞれのメリット・デメリット、キャリアやライフスタイルに応じた選び方のポイントをわかりやすく解説します。将来を見据えた働き方を検討するすべての医師・医学生の方に向けて、信頼できる情報をお届けします。
本記事では常勤医師・非常勤医師の違いを明確にし、それぞれのメリット・デメリット、キャリアやライフスタイルに応じた選び方のポイントをわかりやすく解説します。将来を見据えた働き方を検討するすべての医師・医学生の方に向けて、信頼できる情報をお届けします。
常勤医師と非常勤医師を定義する「32時間ルール」とは
医師の働き方を分類するうえで、重要な基準となるのが「32時間ルール」です。これは厚生労働省が医療法の中で定めている基準で、病院の医療体制の充実度を測る際にも活用されています。
ここでは、このルールの意味と背景、常勤・非常勤医師の定義の違いについて詳しく解説します。
「32時間ルール」とは、病院における医師の勤務体制を評価する際、週あたり32時間以上勤務している医師を“常勤医師”と定義するルールです。この基準は2014年、厚生労働省によって医療法の中で整備されました。常勤医師数の把握は、医療機関が届け出る「病院機能評価」や指導監査の評価においても基礎情報となります。
この32時間は、「常勤換算1.0」としてカウントされる目安でもあり、病院全体の人的配置にも関わる重要な数値です。
3常勤医師とは、特定の医療機関に正職員として所属し、週32時間以上勤務している医師を指します。労働基準法上では1日8時間、週40時間以内が原則とされており、これに則った勤務体系が基本です。
常勤医師には以下のような特徴があります。
3一方、非常勤医師は特定の医療機関に所属せず、週32時間未満の勤務でアルバイト契約や業務委託契約などに基づいて勤務する医師を指します。
勤務形態は以下のように柔軟です。
ただし、社会保険や福利厚生が適用されない場合が多く、自営業者扱いになることから、自身で健康保険・年金の管理や確定申告が必要です。
「常勤換算」とは、病院内の職員数を常勤ベースに揃えて数値化する方法です。たとえば、週16時間勤務の非常勤医師が2名いる場合、「16時間 × 2名 = 32時間」で1人分の常勤医師に換算されます。これは医療法に基づき、病院の人員体制が適切かどうかを外部から評価するためにも利用されます。
ここでは、このルールの意味と背景、常勤・非常勤医師の定義の違いについて詳しく解説します。
(1)32時間ルールの背景と法的根拠
「32時間ルール」とは、病院における医師の勤務体制を評価する際、週あたり32時間以上勤務している医師を“常勤医師”と定義するルールです。この基準は2014年、厚生労働省によって医療法の中で整備されました。常勤医師数の把握は、医療機関が届け出る「病院機能評価」や指導監査の評価においても基礎情報となります。
この32時間は、「常勤換算1.0」としてカウントされる目安でもあり、病院全体の人的配置にも関わる重要な数値です。
(2)常勤医師の定義と待遇
3常勤医師とは、特定の医療機関に正職員として所属し、週32時間以上勤務している医師を指します。労働基準法上では1日8時間、週40時間以内が原則とされており、これに則った勤務体系が基本です。
常勤医師には以下のような特徴があります。
- ・病院から正社員扱いされる(雇用保険・社会保険・厚生年金などに加入)
- ・昇進や役職、教育研修制度を通じたキャリアアップの機会がある
- ・ボーナスや退職金制度が適用される場合が多い
(3)非常勤医師の定義と働き方の特徴
3一方、非常勤医師は特定の医療機関に所属せず、週32時間未満の勤務でアルバイト契約や業務委託契約などに基づいて勤務する医師を指します。
勤務形態は以下のように柔軟です。
- ・週1〜2回など短時間勤務が可能
- ・複数施設を掛け持ちできる
- ・自分でスケジュールを組みやすい
ただし、社会保険や福利厚生が適用されない場合が多く、自営業者扱いになることから、自身で健康保険・年金の管理や確定申告が必要です。
(4)「常勤換算」とは何か
「常勤換算」とは、病院内の職員数を常勤ベースに揃えて数値化する方法です。たとえば、週16時間勤務の非常勤医師が2名いる場合、「16時間 × 2名 = 32時間」で1人分の常勤医師に換算されます。これは医療法に基づき、病院の人員体制が適切かどうかを外部から評価するためにも利用されます。
常勤医師のメリット・デメリット
常勤医師は医師の中でももっとも標準的な働き方とされ、安定した収入とキャリア形成が期待できる点で人気があります。しかし、自由度や拘束時間などに関しては非常勤と比べて注意が必要な点もあります。
ここでは常勤医師として働く際の利点と注意点について詳しく見ていきましょう。
常勤医師として働く最大の魅力は、経済面・社会的信用・キャリア形成の三拍子が揃っていることです。
以下のようなメリットが挙げられます。
一方で、常勤医師としての働き方には制約や負担も伴います。特にワークライフバランスや業務量については人によって重く感じることもあるでしょう。
ここでは常勤医師として働く際の利点と注意点について詳しく見ていきましょう。
常勤医師のメリット
常勤医師として働く最大の魅力は、経済面・社会的信用・キャリア形成の三拍子が揃っていることです。
以下のようなメリットが挙げられます。
- 安定した給与と賞与:固定給+賞与が支給され、収入が安定している
- 社会保険や福利厚生の充実:健康保険、厚生年金、退職金制度などが整備されている
- キャリアアップの道が明確:役職や昇進、専門医取得の支援などが受けられる
- 住宅ローンなどの審査に有利:社会的信用が高く、金融機関の評価が良い
常勤医師のデメリット
一方で、常勤医師としての働き方には制約や負担も伴います。特にワークライフバランスや業務量については人によって重く感じることもあるでしょう。
- 拘束時間が長くなりがち:週5〜6日の勤務に加え、オンコールや残業が発生することがある
- 自由なスケジュールが立てにくい:有給の取得が難しい職場も存在し、柔軟な働き方がしづらい
- 異動・転勤の可能性:特に大学医局などに所属する場合は転勤や出向が発生しやすい
非常勤医師のメリット・デメリット
非常勤医師という働き方は、近年、ライフスタイルやキャリアの多様化に伴い注目を集めています。特に子育て中や他の仕事との兼業を考える医師にとって、柔軟な勤務が可能であることが大きな魅力です。一方で、制度面では注意が必要な点もあります。
非常勤医師として働くことには、時間的・精神的な自由度の高さという大きな利点があります。
以下のようなメリットが挙げられます。
自由な働き方ができる反面、非常勤医師は安定性や保障に欠ける面もあります。
以下の点には注意が必要です。
非常勤医師のメリット
非常勤医師として働くことには、時間的・精神的な自由度の高さという大きな利点があります。
以下のようなメリットが挙げられます。
- 勤務時間や曜日を自由に選べる:週1回、午前中のみなど、ライフスタイルに合わせた勤務が可能
- 複数の医療機関を掛け持ちできる:異なる専門分野や地域での経験を積むことができる
- 高時給のスポット勤務が可能:診療科や地域によっては時給1万円以上の求人も多く存在
- 研究や子育てとの両立がしやすい:非常勤の柔軟性を活かしてキャリアと生活のバランスが取りやすい
非常勤医師のデメリット
自由な働き方ができる反面、非常勤医師は安定性や保障に欠ける面もあります。
以下の点には注意が必要です。
- 社会保険に加入できない場合がある:週20時間未満の勤務では保険未加入となることが多い
- 雇用の安定性が低い:契約更新が保証されず、突然の契約終了リスクもある
- 住宅ローンや各種審査で不利になりやすい:正規雇用でないため、社会的信用が弱いとみなされることも
- 確定申告や保険の手続きが自己責任:収入の管理・納税や国保・年金の手続きはすべて自身で行う必要がある
常勤・非常勤それぞれの収入やキャリア形成への影響
医師としての働き方を選ぶ際、やはり「どれだけ稼げるか」「将来どうキャリアを積めるか」は気になるポイントです。常勤・非常勤それぞれに収入の構造やキャリアステップに違いがあり、自分の目的に合った選択をすることが重要です。
常勤医師と非常勤医師では収入の構造に明確な違いがあります。
以下のように整理できます。
ただし、非常勤医師は高時給に見えても、ボーナスや退職金、福利厚生がないことを考慮すると、年間収入の安定性や実質的な手取りに差が出る場合もあります。
また、非常勤で複数施設を掛け持ちする「フリーランス型」の働き方も可能ですが、税務管理や契約管理を自分で行う必要があり、初期の経験やリスク管理力も問われます。
キャリアパスにおいても、常勤・非常勤で大きく異なる点があります。
特に初期臨床研修〜専門医取得までは、常勤勤務での実績が求められるケースがほとんどです。若手医師のうちは常勤で土台を築き、その後に非常勤へ切り替えるといった段階的な戦略も有効です。
収入モデルの違いと注意点
常勤医師と非常勤医師では収入の構造に明確な違いがあります。
以下のように整理できます。
- 常勤医師:固定給+賞与が基本。年収は勤務先や地域にもよりますが、一般的に年収1,000〜1,500万円程度が相場。
- 非常勤医師:時給制または日給制が主流。時給1〜1.5万円が相場で、勤務日数に応じて月収や年収が大きく変動。
ただし、非常勤医師は高時給に見えても、ボーナスや退職金、福利厚生がないことを考慮すると、年間収入の安定性や実質的な手取りに差が出る場合もあります。
また、非常勤で複数施設を掛け持ちする「フリーランス型」の働き方も可能ですが、税務管理や契約管理を自分で行う必要があり、初期の経験やリスク管理力も問われます。
キャリア形成における影響と選び方
キャリアパスにおいても、常勤・非常勤で大きく異なる点があります。
- 常勤医師:大学医局や大病院での勤務経験を積むことで、専門医取得や指導医の道が開かれやすい。
- 非常勤医師:専門性や診療科によっては経験を積みやすい一方、キャリア評価につながりにくいこともある。
特に初期臨床研修〜専門医取得までは、常勤勤務での実績が求められるケースがほとんどです。若手医師のうちは常勤で土台を築き、その後に非常勤へ切り替えるといった段階的な戦略も有効です。
常勤と非常勤を併用する「ハイブリッド型勤務」の実態
医師の働き方改革やライフスタイルの多様化により、常勤・非常勤のいずれか一方だけでなく、両者を併用する“ハイブリッド型勤務”を選ぶ医師も増えてきました。これは特に30代〜40代の中堅医師や開業前の医師を中心に広がっている働き方です。
ハイブリッド勤務とは、週3日は常勤として勤務し、残りの曜日に非常勤として別施設で働くといったスタイルです。
この働き方には以下のようなメリットがあります。
ただし、以下のような注意点もあります。
以下は、ハイブリッド型勤務を選択する医師に見られる代表的な勤務パターンです。
週4日は常勤勤務、残りの1日は非常勤で在宅医療を担当。新しい分野の経験を積みながら収入も補完している。
大学病院での常勤勤務と並行して、週1日だけ市中病院で非常勤勤務。異なる診療スタイルに触れることで臨床スキルが広がった。
このような勤務形態は、キャリアの幅を広げつつ、収入の複線化や時間の有効活用にもつながります。重要なのは、自身の体力や目的、スケジュール管理能力を見極めた上で無理のない設計を行うことです。
ハイブリッド型勤務のメリット・注意点
ハイブリッド勤務とは、週3日は常勤として勤務し、残りの曜日に非常勤として別施設で働くといったスタイルです。
この働き方には以下のようなメリットがあります。
- 収入の増加が見込める:常勤の安定収入に加え、非常勤で追加収入を得ることが可能
- 異なる分野・施設で経験を積める:複数の診療スタイルに触れ、スキルの幅が広がる
- 開業や転職準備として有効:一部の時間を自由に使えることで、準備期間が確保しやすい
ただし、以下のような注意点もあります。
- 過重労働になりやすい:両立がうまくいかないと、疲労や医療過誤のリスクが高まる
- 契約調整やスケジューリングが複雑:勤務先との連携が必要で、トラブル回避のための管理能力も問われる
想定される勤務スタイルのケース紹介
以下は、ハイブリッド型勤務を選択する医師に見られる代表的な勤務パターンです。
週4日は常勤勤務、残りの1日は非常勤で在宅医療を担当。新しい分野の経験を積みながら収入も補完している。
大学病院での常勤勤務と並行して、週1日だけ市中病院で非常勤勤務。異なる診療スタイルに触れることで臨床スキルが広がった。
このような勤務形態は、キャリアの幅を広げつつ、収入の複線化や時間の有効活用にもつながります。重要なのは、自身の体力や目的、スケジュール管理能力を見極めた上で無理のない設計を行うことです。
ライフステージに応じた働き方の選択肢
医師としてのキャリアは、長期間にわたりライフステージに応じて変化していきます。研修医時代から専門性を確立する時期、家庭や介護との両立期、そして将来的な開業・研究活動まで、各段階で適した働き方を柔軟に選ぶことが重要です。
この時期は、臨床経験を積み、将来の専門領域やキャリアの方向性を決める重要な段階です。多くの医師が常勤として勤務し、症例数や研修体制の整った環境で実力を磨くことが推奨されます。可能であれば、週末にスポット勤務で他の診療科を体験するなど、視野を広げる工夫も有効です。
結婚・出産・育児など、プライベートの比重が高まる時期には、勤務形態の柔軟性が求められます。たとえば、週3日勤務の短時間常勤制度を活用したり、保育施設が併設されている病院を選んだりすることで、家庭との両立が現実的になります。配偶者との役割分担を明確にし、オンコール回避や勤務時間の相談がしやすい職場を選ぶことも大切です。
中堅層〜ベテラン層では、キャリアの再構築や専門性の深化がテーマになります。開業を目指す場合は、時間的な余裕をつくるために非常勤勤務へ切り替えるケースも見られます。大学院に通って研究活動を行ったり、教育に携わるために勤務日数を調整したりと、目的に応じた働き方が求められます。勤務先とのすり合わせを行いながら、無理のない範囲で中長期的な計画を立てることが成功のカギとなります。
若手医師の場合(研修医〜30代前半)
この時期は、臨床経験を積み、将来の専門領域やキャリアの方向性を決める重要な段階です。多くの医師が常勤として勤務し、症例数や研修体制の整った環境で実力を磨くことが推奨されます。可能であれば、週末にスポット勤務で他の診療科を体験するなど、視野を広げる工夫も有効です。
家庭との両立を考える時期(30〜40代)
結婚・出産・育児など、プライベートの比重が高まる時期には、勤務形態の柔軟性が求められます。たとえば、週3日勤務の短時間常勤制度を活用したり、保育施設が併設されている病院を選んだりすることで、家庭との両立が現実的になります。配偶者との役割分担を明確にし、オンコール回避や勤務時間の相談がしやすい職場を選ぶことも大切です。
将来の開業・研究を見据える時期(40代以降)
中堅層〜ベテラン層では、キャリアの再構築や専門性の深化がテーマになります。開業を目指す場合は、時間的な余裕をつくるために非常勤勤務へ切り替えるケースも見られます。大学院に通って研究活動を行ったり、教育に携わるために勤務日数を調整したりと、目的に応じた働き方が求められます。勤務先とのすり合わせを行いながら、無理のない範囲で中長期的な計画を立てることが成功のカギとなります。
まとめ
常勤医師と非常勤医師には、勤務時間・待遇・社会保険・キャリア形成の観点で明確な違いがあります。厚生労働省が定める「32時間ルール」を軸に、社会保険の適用や雇用形態が変わる点は、特に医師としてのキャリアを左右する大きな要素です。
常勤医師は安定した収入と社会的信用、キャリアアップの機会に恵まれている一方、拘束時間が長く自由度が低いという側面もあります。対して非常勤医師は時間的な自由や高い時給が魅力ですが、社会保障の面では自己管理が必要であり、雇用の安定性には注意が必要です。
さらに、最近では常勤と非常勤を組み合わせる“ハイブリッド型勤務”も浸透しつつあり、開業準備や家庭との両立、専門性の深化など、目的に応じた柔軟な働き方が選べるようになっています。
医師としての人生は長く、多様なライフステージに対応していく必要があります。大切なのは、自分が「何を優先したいか」を明確にし、それに応じた働き方を選択することです。
今後のキャリアや生活設計を見据えて、常勤か非常勤か、あるいはその組み合わせか──。自分にとって最適な働き方を選ぶための一助として、本記事が参考になれば幸いです。
常勤医師は安定した収入と社会的信用、キャリアアップの機会に恵まれている一方、拘束時間が長く自由度が低いという側面もあります。対して非常勤医師は時間的な自由や高い時給が魅力ですが、社会保障の面では自己管理が必要であり、雇用の安定性には注意が必要です。
さらに、最近では常勤と非常勤を組み合わせる“ハイブリッド型勤務”も浸透しつつあり、開業準備や家庭との両立、専門性の深化など、目的に応じた柔軟な働き方が選べるようになっています。
医師としての人生は長く、多様なライフステージに対応していく必要があります。大切なのは、自分が「何を優先したいか」を明確にし、それに応じた働き方を選択することです。
今後のキャリアや生活設計を見据えて、常勤か非常勤か、あるいはその組み合わせか──。自分にとって最適な働き方を選ぶための一助として、本記事が参考になれば幸いです。

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