薬事承認とはどんなもの?概要・流れ・最新の承認事例について解説
2025/03/06
2025/03/06
企業が医薬品や医療機器を製造・販売するには、薬事承認が必要です。製薬企業や医療機器メーカー、特に薬事部門で働く人にあたり、薬事承認の知識は必須です。
しかし、薬事承認は専門性の高い内容のため「聞いたことはあるけど、内容はよくわからない」という方も多いのではないでしょうか?
この記事では、薬事承認の概要やプロセスについてわかりやすく解説。さらに最近承認された注目の医薬品もご紹介します。
しかし、薬事承認は専門性の高い内容のため「聞いたことはあるけど、内容はよくわからない」という方も多いのではないでしょうか?
この記事では、薬事承認の概要やプロセスについてわかりやすく解説。さらに最近承認された注目の医薬品もご紹介します。
薬事承認とはそもそも何?実施する目的とは
製薬会社や医療機器メーカーをはじめとする企業が医薬品や医療機器を製造・販売するには、それまでの研究開発の結果をもとに有効性・安全性・品質についての審査を受け、厚生労働省の承認を受けなければいけません。
薬事承認の申請など薬事規制に対応するための業務を担当する職種を、薬事職といいます。企業が申請した薬事申請を承認するのは厚生労働大臣ですが、審査は「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」が行います。
薬事承認が必要な理由は、医薬品や医療機器は身体に直接作用するため、万が一、有効性・安全性・品質に問題があった場合、重大な健康被害を起こすリスクがあるからです。
薬事承認は、医薬品や医療機器を世に送り出すための非常に重要なプロセスです。しかし、日本の薬事承認は欧米などと比べて時間がかかる傾向にあり、他の国ではすでに承認されている医薬品が日本ではまだ承認されていない状態を指す「ドラッグ・ラグ」などの問題があります。
近年は、有効な治療法のない疾患に対する医薬品で患者数が少ないなどの理由で臨床試験を行うことが困難なものを承認審査において優先的に取り扱う、「条件付き早期承認制度」を設けるなど、承認にかかる期間の短縮に取り組んでいます。
そうした背景から、薬事職の重要性は今後ますます増していくでしょう。
薬事承認の申請など薬事規制に対応するための業務を担当する職種を、薬事職といいます。企業が申請した薬事申請を承認するのは厚生労働大臣ですが、審査は「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」が行います。
薬事承認が必要な理由は、医薬品や医療機器は身体に直接作用するため、万が一、有効性・安全性・品質に問題があった場合、重大な健康被害を起こすリスクがあるからです。
薬事承認は、医薬品や医療機器を世に送り出すための非常に重要なプロセスです。しかし、日本の薬事承認は欧米などと比べて時間がかかる傾向にあり、他の国ではすでに承認されている医薬品が日本ではまだ承認されていない状態を指す「ドラッグ・ラグ」などの問題があります。
近年は、有効な治療法のない疾患に対する医薬品で患者数が少ないなどの理由で臨床試験を行うことが困難なものを承認審査において優先的に取り扱う、「条件付き早期承認制度」を設けるなど、承認にかかる期間の短縮に取り組んでいます。
そうした背景から、薬事職の重要性は今後ますます増していくでしょう。
薬事承認の流れって?一般的なプロセスを紹介
開発した医薬品・医療機器は、人間の身体に使用して有効性・安全性を確認する治験を実施してから、薬事承認へと進みます。
ここでは、医薬品の薬事承認の一般的な流れを紹介します。
厚生労働省に、申請書と申請に必要な試験結果をまとめたデータ資料を提出します。申請書には、その医薬品が必要な理由・開発の経緯・臨床試験や非臨床試験などの詳細・品質管理方法といった、安全性・有効性に関する情報を具体的に記載しなければいけません。
申請後の審査は、主に医薬品医療機器総合機構(PMDA)が実施します。
提出した資料の根拠となるのは、治験をはじめとする臨床試験の結果です。医薬品が科学的・倫理的に信頼できるかを確認するために、申請資料が薬機法施行規則に基づく信頼性の基準を満たしているかを調査します。
例えば治験のデータであれば、厚生労働省令(GCP省令、GLP省令、GPSP省令)で定められた基準を満たしているか、治験実施計画書通りに実施したかなどを精査します。問題点があれば審査担当者から指摘が入ります。
新薬の審査は、高度な専門知識や判断が求められるため、薬学・工学・臨床医学・毒性・生物統計など各分野の専門家数名で構成される審査チームで実施します。
審査担当者から確認事項が伝えられ、企業の薬事担当などが回答。さらに外部の専門家との意見交換、第三者認証機関との面談なども実施し、さまざまな角度から協議したうえで、医薬品の信頼性を調査します。
医薬品の信頼性が高いと判断された場合、製品製造所の調査を実施します。製品の供給能力や品質管理の適切さを確認し、将来にわたって安定して製品を製造・供給し続けられるかを判断します。
製造所の調査でも、必要に応じて外部の専門家との意見交換を行い、問題点があれば指摘されます。
上記のように有効性や安全性などを厳正に審査したうえで、厚生労働大臣と薬事・食品衛生審議会による諮問を経て、承認が下ります。
このように、薬事承認は厳密なプロセスで行われるため、早くても約半年、長ければ1年以上かかります。申請内容に不備があったり問題点を指摘されたりした場合は、再審査となりさらに長期化します。
ここでは、医薬品の薬事承認の一般的な流れを紹介します。
【1】申請書と添付書類の提出
厚生労働省に、申請書と申請に必要な試験結果をまとめたデータ資料を提出します。申請書には、その医薬品が必要な理由・開発の経緯・臨床試験や非臨床試験などの詳細・品質管理方法といった、安全性・有効性に関する情報を具体的に記載しなければいけません。
申請後の審査は、主に医薬品医療機器総合機構(PMDA)が実施します。
【2】信頼性調査
提出した資料の根拠となるのは、治験をはじめとする臨床試験の結果です。医薬品が科学的・倫理的に信頼できるかを確認するために、申請資料が薬機法施行規則に基づく信頼性の基準を満たしているかを調査します。
例えば治験のデータであれば、厚生労働省令(GCP省令、GLP省令、GPSP省令)で定められた基準を満たしているか、治験実施計画書通りに実施したかなどを精査します。問題点があれば審査担当者から指摘が入ります。
【3】審査担当者との面談など
新薬の審査は、高度な専門知識や判断が求められるため、薬学・工学・臨床医学・毒性・生物統計など各分野の専門家数名で構成される審査チームで実施します。
審査担当者から確認事項が伝えられ、企業の薬事担当などが回答。さらに外部の専門家との意見交換、第三者認証機関との面談なども実施し、さまざまな角度から協議したうえで、医薬品の信頼性を調査します。
【4】製造所の調査
医薬品の信頼性が高いと判断された場合、製品製造所の調査を実施します。製品の供給能力や品質管理の適切さを確認し、将来にわたって安定して製品を製造・供給し続けられるかを判断します。
製造所の調査でも、必要に応じて外部の専門家との意見交換を行い、問題点があれば指摘されます。
【5】厚生労働大臣の承認
上記のように有効性や安全性などを厳正に審査したうえで、厚生労働大臣と薬事・食品衛生審議会による諮問を経て、承認が下ります。
このように、薬事承認は厳密なプロセスで行われるため、早くても約半年、長ければ1年以上かかります。申請内容に不備があったり問題点を指摘されたりした場合は、再審査となりさらに長期化します。
ここ数年で薬事承認された医薬品って?近年の事例を紹介
ここ数年で薬事承認された医薬品には、どのようなものがあるのでしょうか。特に注目されている3つの医薬品を紹介します。
レカネマブは、日本のエーザイ株式会社とアメリカのバイオジェン社が開発した、アルツハイマー病の進行を遅らせることを目的とした医薬品です。アルツハイマー型認知症の発症と深い関係があるアミロイドβタンパク質を取り除くことで、認知機能の低下をゆるやかにする作用があります。
臨床試験によって、症状の進行をおよそ7.5カ月遅らせるのに相当する効果が認められ、2023年7月にはアメリカの承認を受け、2023年9月には日本でも条件付き早期承認されました。
日本はアルツハイマー患者が多いため、社会的に大きな期待を集めている医薬品です。ただしレカネマブを投与しても、すでに死んでいる神経細胞は再生できません。そのため、主に早期のアルツハイマー病患者が投与の対象となります。
ビルトラルセンは、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)と日本新薬株式会社が共同開発した、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬で、2020年に条件付きで承認されました。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィンという遺伝子の変異により筋肉内でたんぱく質がつくれなくなることで、運動機能が低下する希少疾患です。重い機能障害・呼吸筋の障害・心筋の障害を起こし、呼吸不全や心不全に至ります。
ビルトラルセンは、ジストロフィン遺伝子の53番と呼ばれる部分をスキップさせ、通常よりも短いたんぱく質をつくる作用があります。これまで日本国内には根本的な治療法がなかったため、有効な治療法として大きな注目を集めています。
ゾルベツキシマブはアステラス製薬株式会社が開発した、CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がんを対象にした治療薬です。2024年3月に日本での薬事申請承認を取得しました。その後、日本のみならず、欧州やアメリカでも承認を取得しています。
胃がんの治療法は進歩していますが、現在も多くの人が命を落としています。
がん情報サービスによると、2023年のがん死亡数の胃がんの順位は4位です。有効な治療法として、ゾルベツキシマブは期待されており、世界で最大2000億円の年間売り上げを目指しています。
(1)レカネマブ
レカネマブは、日本のエーザイ株式会社とアメリカのバイオジェン社が開発した、アルツハイマー病の進行を遅らせることを目的とした医薬品です。アルツハイマー型認知症の発症と深い関係があるアミロイドβタンパク質を取り除くことで、認知機能の低下をゆるやかにする作用があります。
臨床試験によって、症状の進行をおよそ7.5カ月遅らせるのに相当する効果が認められ、2023年7月にはアメリカの承認を受け、2023年9月には日本でも条件付き早期承認されました。
日本はアルツハイマー患者が多いため、社会的に大きな期待を集めている医薬品です。ただしレカネマブを投与しても、すでに死んでいる神経細胞は再生できません。そのため、主に早期のアルツハイマー病患者が投与の対象となります。
(2)ビルトラルセン
ビルトラルセンは、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)と日本新薬株式会社が共同開発した、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬で、2020年に条件付きで承認されました。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィンという遺伝子の変異により筋肉内でたんぱく質がつくれなくなることで、運動機能が低下する希少疾患です。重い機能障害・呼吸筋の障害・心筋の障害を起こし、呼吸不全や心不全に至ります。
ビルトラルセンは、ジストロフィン遺伝子の53番と呼ばれる部分をスキップさせ、通常よりも短いたんぱく質をつくる作用があります。これまで日本国内には根本的な治療法がなかったため、有効な治療法として大きな注目を集めています。
(3)ゾルベツキシマブ
ゾルベツキシマブはアステラス製薬株式会社が開発した、CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がんを対象にした治療薬です。2024年3月に日本での薬事申請承認を取得しました。その後、日本のみならず、欧州やアメリカでも承認を取得しています。
胃がんの治療法は進歩していますが、現在も多くの人が命を落としています。
がん情報サービスによると、2023年のがん死亡数の胃がんの順位は4位です。有効な治療法として、ゾルベツキシマブは期待されており、世界で最大2000億円の年間売り上げを目指しています。
まとめ
薬事承認は、医薬品や医療機器の有効性・安全性・品質を厚生労働省が審査し、製造・販売を認める制度です。
薬事承認は一般的に、【1】申請書と添付資料の提出、【2】信頼性調査、【3】審査担当者との面談など、【4】製造所の調査、【5】厚生労働大臣の承認という流れで進みます。
薬事承認は、医薬品・医療機器の販売において欠かせないプロセスです。薬事承認を担当する薬事職は、専門性が高く、非常にやりがいが大きい仕事です。
興味のある方は、医療業界専門の転職エージェントや転職サイトで求人をチェックしてみてはいかがでしょうか。
薬事承認は一般的に、【1】申請書と添付資料の提出、【2】信頼性調査、【3】審査担当者との面談など、【4】製造所の調査、【5】厚生労働大臣の承認という流れで進みます。
薬事承認は、医薬品・医療機器の販売において欠かせないプロセスです。薬事承認を担当する薬事職は、専門性が高く、非常にやりがいが大きい仕事です。
興味のある方は、医療業界専門の転職エージェントや転職サイトで求人をチェックしてみてはいかがでしょうか。

この記事が気に入った場合は
Xへポストをお願いします