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今いる場所で、常に一番を目指す
今いる場所で、常に一番を目指す

今いる場所で、常に一番を目指す

聖心美容クリニック 熱海院 院長 兼 美容皮膚科指導責任者小林 美幸 ※2026年2月17日現在

聖心美容クリニック 熱海院
院長 兼 美容皮膚科指導責任者
小林 美幸 ※2026年2月17日現在

1999年に東京女子医科大学を卒業後、同大学病院皮膚科や愛知医科大学皮膚科で研鑽を積み、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医を取得。現在は聖心美容クリニック熱海院の院長を務め、20年以上にわたり美容皮膚科の最前線に立ち続けている小林美幸院長。かつては「国連で働きたい」という夢を抱いていた小林院長が、なぜ医師を志し、まだ未開拓だった美容医療をリードしてきたのか。そのキャリアの軌跡と、若手医師への熱いメッセージを伺った。


自身の置かれた環境でベストを尽くし、皮膚科医としての確かな土台を築くことが、未知の領域を切り拓く自信に繋がったと語る小林院長。祖母の教えを支えに、患者一人ひとりと誠実に向き合ってきた軌跡を振り返っていただいた。

中学生の頃はニューヨークの国連本部で働くようなキャリアを夢見ていたんです。ところが、一家の決定権を持つ祖母から「医者になりなさい」と厳命を受けました。祖母の言葉は絶対でしたので、驚きつつもそれを受け入れましたね。

高校進学の際も、希望していた進学校ではなく、自宅から徒歩圏内の女子高へ進むことになりました。その時に祖母から授かったのが「鶏口となるも牛後となることなかれ」という言葉でした。これは、大きな集団の末端にいるより、どんな環境でもトップでいなさいという意味の言葉です。その教えの通り、私は「今いる場所で、常に一番を目指す」という姿勢で、医師の道を歩み始めました。

皮膚科を選んだのは、実習時代に東京女子医科大学名誉教授の川島眞先生の診察に衝撃を受けたからです。先生は患者さんの腕を一目見ただけで「君、熱帯魚を飼っているだろう」と言い当てました。熱帯魚に触れることで発症する皮膚病があり、先生は皮膚の状態を見ただけで、それを見抜いたのです。

内科の場合は、検査結果の数値やデータをもとに原因を突き止めていきますが、皮膚は発疹など表面の視覚情報から組織の状態が想像できます。当時の私は、その面白さに魅了されました。川島先生に師事し、たたきこんでいただいた「皮膚を診る基礎力」が、キャリアの土台になっていると思いますね。

その後、東京女子医大や愛知医大で経験を積み、皮膚科専門医を取得しました。専門医を取得したのは、小さい子どもの子育ての真っ最中です。出産は医師としての経験を積んでから、という選択肢もありましたが、状況が整うのを待つよりも、体力のある若いうちに出産することを選びました。子育てと仕事の両立で大変だった時期もありましたが、周囲への感謝と謙虚な気持ちを忘れずに働くことで道を切り拓くことができましたね。

専門医を取得していなくても非常に勉強されている先生もいらっしゃいますが、やはり確かな基礎が身についていることを客観的に証明できるので、取得して良かったと思います。

皮膚科専門医を取得後、2006年に美容医療の世界へ飛び込みました。当時、非常勤先で「しみを治したい」という相談が多く、レーザー導入を事務長に掛け合ったところ、系列の聖心美容クリニック(旧称:聖心美容外科)を紹介されたのがきっかけです。ちょうど現在の熱海院の前身が立ち上がる頃に入って、最初は一般診療も美容医療も両方やっていました。しかし、勤務していた病院が閉院したのをきっかけに、美容医療一本でいこうと決めたんです。それ以来、熱海院の院長として経験を重ねてきました。

最大の成功体験は、悩みを抱えた方に自信をもって向き合える医師になれたことです。私が美容医療に携わり始めた2006年は、まだ参考資料もエビデンスも乏しく、美容医療への風あたりが強い時代でした。そうした状況のなか、皮膚科医としての専門性を活かし、未知の領域を切り拓き、20年かけて自分なりの診療スタイルを確立できました。皮膚組織を採取してデータを収集し、それをもとに学会発表を行うなど、エビデンスに基づいた美容医療を追求してきたのが実を結んだと感じています。

美容医療の臨床経験は、国内でもトップクラスだと自負しています。患者さんの肌を実際に診てきた経験と、様々なエビデンスがつながり、昔よりも自信を持って美容医療を提供できるようになりました。その結果、患者さんから「先生に出会えて良かった」と言っていただけることが、医師として何よりの成功体験ですね。

日々の診療のなかで、医学の進歩に対する焦燥感を感じていると語る小林院長。専門性を極める一方で、常に医師としての基本に立ち返る姿勢の重要性を説きます。

キャリアでの失敗体験というと特定の大きな出来事を想像するかもしれませんが、私の場合は、私自身の努力不足からくる“焦り”がそれに近いかもしれません。美容医療の道に進んで約20年が経ちますが、ふとした瞬間に、「一般皮膚科の最新知識をアップデートし切れていないのではないか」と強い危機感を抱くことがあります。

現代の医学は日進月歩で、免疫学的製剤やバイオテクノロジーの進化は目覚ましいものがあります。アカデミックに勉強したいという思いはあるのですが、美容医療に特化しているなかで、もどかしさを感じている部分があります。

美容医療はあくまで一般医療を応用した領域です。土台となる一般皮膚科の知識がしっかりあってこそ、安全で効果的な美容治療が提供できます。例えば、私が医師になった頃にレーザー脱毛が登場しました。資料もまだ少なく、手探りで学んでいきました。そこで役に立ったのが、皮膚科で学んだ知識です。皮膚の状態を正しく理解できているので、レーザーを入れるとどのような状態になるかがわかるのです。

そうした経験を踏まえ、今の焦燥感を忘れず、皮膚科医としての基本と医療の進歩を学び続ける姿勢を大切にしたいと思っています。

座右の銘は「鶏口となるも牛後となることなかれ」。置かれた環境にかかわらず、自らの立場で最善を尽くす姿勢があったからこそ、美容医療がまだ手探りの段階にあった時代から、着実にキャリアを積み重ねられた、と話す小林院長。その信念について伺った。

座右の銘としているこの「鶏口となるも牛後となることなかれ」という言葉通り、私は「どこにいても、自分の志さえあれば道は拓ける」と信じて歩んできました。

この精神があったからこそ、当時はまだ発展途上だった美容医療の世界で、道を切り拓けたのだと思います。上には上がいますが、どの環境でも自分のベストを尽くす。それが今の私の礎です。

オフの日もつい仕事のことを考えてしまうという小林院長。料理に没頭する時間は、無になれる特別なひとときだという。

「趣味は?」と聞かれると、どうしても仕事が頭をよぎってしまうのですが、意識的に無になれる時間を作るようにしています。そのひとつが料理です。没頭して手を動かしている時間は、特別なひとときですね。旅の計画も大好きで、リサーチの結果、私のGoogleマップは訪問候補の“チェック”で埋め尽くされています。

休日に愛犬と遊んでゆっくり過ごそうと思っても、結局はつい仕事をしてしまうことも多いです。でも、それも含めて私らしいライフスタイルなのだと楽しんでいます。

若者たちへのメッセージとして「若いうちに、勉強に打ち込んで専門性を身につけてほしい」と語る小林院長。皮膚科医としての専門性を基盤に、美容医療の分野を切り拓いてきた自身の経験から、確かな知識と技術が医師としてのキャリアを長く支えると語る。その言葉は、将来について考える若い医師にとって、一つの指針となるだろう。

これからの医療界を担う若い先生方には、AIには決して代替できない「人の心に寄り添う力」を磨いてほしいと思います。診断や治療方針の策定は、AIの得意分野になるでしょう。しかし、患者さんが抱える不安や「きれいになりたい」という切実な願いを理解し、共感できるのは、結局のところ人間だけです。

AIを最大限に活用しながらも、それに頼り切るのではなく、自らの知識を磨き、人の心に寄り添える医師を目指してほしいと思います。そして私自身も、その姿勢を忘れずに歩んでいきたいです。その支えとなるのが、医師としての基礎力です。

近年は臨床研修後、そのまま美容医療に進む「直美(ちょくび)」を選択する医師も増えています。その背景には、働き方や将来への不安があることも理解しています。ですが、やはり保険医療での臨床経験は、かけがえのないものです。若いうちに悩み、失敗しながら積み重ねた臨床経験は、結果的に自分の選択肢を広げ、医師としての軸を強くしてくれるからです。

若い時は勉強に打ち込むだけの体力もありますし、ある意味で恥をかけるものです。私自身、研修医時代に何度も点滴に失敗してしまっても「いいよ、頑張れ」と応援してくれた患者さん、丁寧に指導してくれた先輩、支えてくれた同僚。多くの方々のおかげで、医師として成長できました。私には、医学部に通う二人の子どもがいますが、彼らにも「将来何科を選んでも良いけれど、まずはひとつの専門性を突き詰めなさい」と伝えています。

今後の目標は、美容医療のリーダーとして、自分自身がアンチエイジングの先頭に立ち続けることです。健康で美しくいることは、自信と活力につながります。患者さん一人ひとりの価値観に寄り添い、最小限の美容医療で、最大限の満足を引き出せる。そんな「一生ついていきたい」と思われる医師であり続けたいと考えています。

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