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全てのことは必然
全てのことは必然

全てのことは必然

一般社団法人 東京都作業療法士会 会長田中 勇次郎

一般社団法人 東京都作業療法士会
会長
田中 勇次郎

日本のリハビリテーション医療における作業療法の創成期に、作業療法士の養成校に入学した田中会長。卒業後は現場で作業療法士として、多くの患者をサポートしてきた。ALS(筋萎縮性側索硬化症)やDMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)などの神経・筋難病患者へのパソコン活用の第一人者だ。ALSやDMDの患者は、病気の進行に伴い会話や書字が困難なるコミュニケーション障害が起こる。眼球の動きだけで文章が書ける重度障害者用意思伝達装置の開発に携わるなど、生活の質の向上に貢献した。「全てのことは必然」と語る田中会長に、キャリアを振り返っていただいた。


キャリアにおける成功体験を伺ったところ、ALSやDMDの患者へのパソコン活用を挙げていただいた。病状が進むにつれて、わずかな指や目の動きでしか意思表示をできなくなる神経・筋難病患者にとって、コミュニケーション障害は非常に深刻だ。田中会長は、パソコンを活用することにより、眼球の動きで操作できるコミュニケーションエイド(以下、CA)や音声やシンボルを利用したCAなどを開発した。さらに、DMD患者のコンピューターグラフィックス(以下、CG)制作を支援した。重い障害があっても、社会とつながりを持つことができたり、自分の力で収入を得ることができたりするようにサポートをしてきた。こういった先進的な取り組みは、多くの患者と接するなかで生まれたという。

 

キャリアにおける成功体験としては、やはりALSやDMDの患者さんへのパソコンの活用ですね。1980年に神経・筋難病患者さんを診る病院に入職しました。最初に課題になったのが、ナースコールのスイッチを押せない患者さんへの対応です。作業療法士の仕事の一つに自助具づくりがあります。使いやすい道具を利用して便利に生活できるようにする。この考えで、その方が利用できるようにナースコールスイッチを工夫しました。当時はパソコンが出始めたころで、「ナースコールのスイッチを作動させられるなら、パソコンが利用できるのではないか?」と考えました。当時、ジョイスティックコントローラーで利用できるゲームソフトが少しずつリリースされ、ジョイスティックに代わる入力装置を作れば、キーボードが操作できない患者さんにもパソコンが利用できて、やれることが増えはずだと確信するようになりました。また、ソフトも自作し利用してもらったりもしました。

 

身体が思うように動かして遊ぶことが困難なDMD患者さんも、パソコンを活用しゲームをすることやお絵かきソフトで絵を描くことができるようになりました。一つできるようになると、本人もどんどんやりたいことが増えていきました。このことは患者さんが豊かに生活するうえで、とても大切なことだと思っています。

神経・筋難病の患者さんの就労という課題の解決にもパソコンの活用は有効でした。CG制作やデータチェックといった仕事が人工呼吸器をつけて寝たきりの状態でもできるようになりました。私が幼児の頃から担当していた患者さんで就労に成功したケースがあります。自分で稼いだお金で好きなアーティストのブルーレイディスクを購入したり、買い物をしたりできるようになって、すごく喜んでいます。

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