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幸運の女神は、準備ができている者に微笑む
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京都大学大学院医学研究科 教授森本 尚樹

京都大学大学院医学研究科
教授
森本 尚樹

京都大学医学部を卒業後、形成外科医として病院に勤務し、臨床経験を積んだ。その後大学に戻り、人工皮膚の研究に携わる。現在は、京都大学大学院医学研究科・教授として、臨床や研究を行っている。形成外科の最先端を走る森本教授のキャリアは、医学の道を志す若者にとって大きな刺激となるだろう。


キャリアの転機として、上司からの「私の言うことを100%聞くのであれば昇進させます」という申し出を断ったエピソードをお聞かせいただいた。森本教授は「特に成功体験はありません。やるべきことを続けてきただけ」と語る。自分でしっかり考えて決断を下し、コツコツと努力を続けることこそが、キャリアを成功させる王道なのだとあらためて気づかされる。

 

僕はもともと研究をしたいと強く思っていたわけではなく、そのときどきでやるべきことを続けた結果、今のような状態になったんです。

最初の分岐点は、形成外科を選んだことです。形成外科は、比較的マイナーで歴史も浅い診療科で、学会の会員数も耳鼻科・眼科の半分くらいしかいないんです。僕が形成外科を選んだのは、今から28年前。当時は卒業時に専門を決めることになっていました。

当時は内科で診断をして外科で手術をするという流れが主だったので、内科ではなく、外科系を志望していました。外科の手術はほとんど、がんの手術なのですが、がん以外の手術に興味がありました。小児の先天異常を手術する産婦人科と、傷をきれいにする形成外科を検討して、形成外科を選択。傷をきれいにしたり、なくなったものを再建したりする手術をしたいと思ったんです。結果的には、診療内容も手術も全く不満がなく、自分に合ったよい選択だったと思っています。

その後もいくつか分岐点があるのですが、一番大きかったのは、10年くらい前に職場を退職したことです。一緒に研究していた上司に「私の言うことを100%聞くのであれば昇進させます」と言われて、翌日に「今日で辞めます」と伝え、残務整理の後に退職しました。

僕はドクターとしてベテランの域に入っていたので、かなり乱暴だなと思って出ることにしました。その後、関西医科大に入職したのですが、非常に自由に研究や臨床をさせてもらえました。そういった環境のおかげで、人工皮膚の開発・製品化を実現できたのだと思います。そのまま職場に残って、同等の成果を出せたとは思わないので、結果的にプラスに働きました。その成果が評価され、京大の教授に就任しましたしね。

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